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ドイツにおける行政機関と公益法人の関係を規程する基本原則は、補完性の原理(Subsidiaritat)である27)。この原理によれば、ヨーロッパ連合の形成において有名である通り、国民個々のニーズは原則的に自分自身もしくは家族によって充足しなければならない。しかし,それが不可能となって初めて他者に依存する、とされる。ここで他者とは、第一義的に、家族より大規模で最も身近な組織である教会やその他の民間団体であり、これらの組織によっても当該ニーズが充足されない場合に初めて、行政機関が関与する。しかも、それは、市町村、州、連邦という順番に、なるべく当該ニーズの発生したところに近いレヴェルで処理される。社会福祉領域では、この教会や民間団体のレヴェルで、公益法人が活躍している。行政機関の側としては、社会福祉ニーズの充足に当たって活動する公益法人への援助という形で関与する、という論理が適用されている28)。以下では、連邦、州、市町村の行政機関からの補助金給付について、具体的に見ていきたい。

 

(2) 連邦からの援助−連邦家庭高齢者女性青少年省の場合
入手可能な資料の制約から、青少年援助について概観したい。青少年援助の根拠法は、児童青少年援助法(Kinder-und Jugendhilfegesetz)である。補完性の原理に従って、ドイツの青少年援助は、理論上、活動内容上、活動方法上非常に多様な民間団体によって実施されている。行政機関は、青少年福祉のために、これらの諸団体とパートナーとして協力し、財政援助を行う(同法第4条)。特に広域的な意義の強い青少年援助活動について、連邦が関与し、その担当はBMFSFJである。同省は、青少年援助のために、連邦児童青少年計画、及び同計画政綱を定めている29)。同政綱によれば、青少年援助の領域で援助対象となるのは、外国人を含む27歳未満の人物、その両親または親権者、そして何らかの形式で青少年援助に関わる諸団体である。この援助対象諸団体は、公益目標を追求し、計画的に施策を遂行する専門性を有し、資金を目的適合的経済的に活用しうる等の条件を満たさねばならない、具体的に青少年援助の分野では、児童青少年援助法第75条により、青少年援助団体としての認可制度が規定されている。教会と全国レヴェルの無償社会福祉6団体は自動的に青少年援助団体として認可され、州以下のレヴェルの団体は、過去3年間以上青少年援助活動に従事し、活動目的と公益性が青少年援助に叶い、専門性と団体としての活動能力が認められる限り、青少年援助団体として認可される30)。これは、公益法人として認可された団体が、個別法の規程に基づいて、さらに特定の援助団体として認可される制度であり、所轄毎の法人認可制を採る日本の場合と、若干類似している。

 

 

 

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